【感想レビュー/ネタバレなし】WILL:素晴らしき世界【Steam/Switch】

2017年6月6日にSteamで配信され、その後2018年11月15日にSwitchとPS4でもダウンロード版が配信されたノベルゲーム「WILL:素晴らしき世界」

本作は神様である主人公の少女が、人々から届いた「救いを求める手紙」に書かれている出来事を変え、幸せな結末へ導くゲームです。

開発はWMYスタジオという中国のゲーム会社で、いわゆる中華ゲーです。

この記事では、「WILL:素晴らしき世界」の個人的評価(ネタバレなし)を書きながらどういった方におススメか?を紹介します。

スポンサーリンク

全体評価

個人的には「神ゲーになりうるポテンシャルがある良作」です。

複数の人物が織りなすドラマチックな展開、オリジナリティと面白味のあるゲームシステム、そして意外などんでん返し。これだけボリュームのあるゲームなのに、既存のノベルゲームより圧倒的に安い1500円。正直、2倍の値段で売ってもプレイする価値があります。

「神ゲー」と断言するには少し引っかかる部分がありますが、間違いなくそのポテンシャルはあります。
シナリオが倍のボリュームであれば神ゲーになっていたのでは?
そう思えるゲームです。

※ちなみにシナリオのボリュームは値段相応です。

良かった点

独創性の高いゲームシステム

本作の一番の魅力はコレです。既存のノベルゲームは、選択肢によって分岐する物語を読み進めますが、本作には「選択肢から選ぶ」要素は一切ありません。冒頭でも説明した通り、手紙に書かれた出来事を入れ替えることで、結末を変えハッピーエンドへと導くゲームです。

例えば、

①僕はラケットを振り回した。振り回したラケットが彼女に当たった。
②私はラケットを構えた。そしてボールを見た。しかしボールは目の前に来ていて、すぐに打ち返せなかった。

と、この2つの出来事があったとします。これを

①僕はラケットを構えた。彼女に「持ち方が違う」とアドバイスをもらった。
②私はボールを見た。そしてラケットを振り回した。ボールはラケットに当たり、打ち返せた。

このように、「出来事」を入れ替えることで後続のストーリーを変更させることができます。
一種のパズルゲームのような、頭を使うシステムです。

このゲームシステム、ノベルゲームと相性抜群です。
文章の組み合わせを変えることで未来が変わり、後続のストーリーが変わる。
組み合わせの数だけ、結末が増えるのです。
既存の「選択肢から選ぶ」ノベルゲームよりゲーム性が高く、「この組み合わせだと、どんな展開になるのかな?」とワクワクしながら遊ぶことができます。

交錯する登場人物達

主人公はあくまで神様の少女ですが、メインとなるのは彼女ではありません。ストーリーは基本、彼女に救いを求める人々の話を中心に展開されます。「街」や「428」のように複数の主人公の話を読み進める構成です。
一方の登場人物の話の中に他の登場人物が出てきたり、一方で起こった出来事が他方では重要だったりします。

ですが、「街」や「428」と大きく違う点が2つあります。

①「短編集」形式
登場人物ごとの物語は「一本の大きなストーリー」ではなく「時系列順の短編が複数話連なる」形式です。短編同士は、直近の出来事のこともあれば数年後の出来事のこともあります。

②時系列と場所が異なる
登場人物は様々な国でバラバラな職業についています。ある人物は北京の学生、またある人物は韓国の警察官、またある人物は香港に訪れたメキシコ人…といった具合です。
またそれぞれの物語で時間軸も異なり、一方では朝の話をしているのに、他方では夜の話・翌日の話・はたまた数か月後の話をしていることもあります。

これらがうまく組み合わさることで、「街」や「428」とは違ったつながり方・話の展開がなされ、思わず「そこで繋がるのか!」と驚かされることもあります。

気になる点

難易度が激ムズ

私が脳筋だからかもしれませんが、中盤以降はほぼ自力で解けませんでした。
中盤以降は位置を変えられる単語が多くなり、組み合わせが増えます。にも関わらず、変更後のシナリオのバリエーションは少なく、ヒントがかなり限られています。特に終盤、複数の数字を並べ替えて正しい暗号にさせたり、複数の方角を並べ替えて正しい道順にさせたりするのは、文章をどう読み直しても全く推理できませんでした。
また、組み合わせが多いので「総当たりで文章を組み合わせる作業」で答えを当てるにしても結構キツイ作業になります。個人的に、中盤以降は「総当たりで文章を組み合わせる作業」感が強く、せっかく面白いゲームシステムなのに、後半はあまり楽しんで組み合わせていませんでした。

シンプルな状況説明が多い

日本語訳自体はそれほど問題ありません。
誤字脱字や直訳のような表現はあるものの比較的少なく、海外のゲームにしては翻訳能力が高い方ではないでしょうか。ですが文章を読んでいると違和感を覚えました。
何故違和感があるのかを説明するのは難しいのですが、読んでいるうちに「これかもしれない」という部分を見つけました。

それが「シンプルな状況説明が多い」点です。

突然ですが質問です。皆さんは下の①と②のどちらが読みやすいですか?(適当に作った文章なので内容は深く考えないでください。笑)

①私は彼の冗談に呆れ「そんなこと言っているからバカだと罵られるのよ」と呟いた。すると「ふん!バカにしたければバカにするがいいさ。そのうち俺はビッグになってやる」と彼は息巻いた。 
②私に取り憑く悪霊は祓うのが難しく、A町北部の山岳に建つ尖峰寺に住む安西法師を訪ねた。安西法師は私に、お経が書かれた死装束を身に纏うよう指示した。

多くの方は①の方が読みやすいのではないでしょうか?なぜなら②は状況説明が多く、何が起こっているかを考えないといけないからです。
本作は②のような状況説明的な文章が多めで、日常会話や情景描写などの冗長的な文章は少なめです。なぜ②のような文章が多いのか?それは「1話毎の短編で展開される」からです。
話の展開によって、前回の話から主人公の置かれた状況が大きく変わっていたり、時には数年後になっていることもあります。その度に状況説明から始めるのに加え、一話あたりが短いため、トータルで見ると状況説明が多い文章のように感じます。

私は「赤いリンゴ」と書かれていたら赤いリンゴを想像しながら読み進めるタイプの人間です。もし私と同じタイプの人は、読み進める度に状況を想像しないといけないため、読んでいてしんどく感じるかもしれません。

ですが、1話毎が短編で不必要な文章も少ない上に、テンポも良いため、ストーリーはサクサク進みます。

どんな人におススメか?

どんな人におススメか?

序盤は難易度が低く、少し考えれば正解が分かるのですが、中盤以降は難易度が急激に跳ね上がります。ですので、「どの組み合わせが正しいか」を推理する力がかなり求められるゲームです。全く推理できずに詰まってしまうと「総当たりで文章を組み合わせる作業」をせざるを得なくなります。
ですが、逆に「この組み合わせか!」と分かった時の爽快感は堪りません。
ちなみに私は中盤以降、殆ど考えても分からなかったため、最終的には攻略サイトを見てプレイしました。笑

短編小説が好き

本作は1話毎が短編です。ですので短編のオムニバス形式の小説を読んでいるように、サクサク読み進めることができます。短編集や短編小説が好きなひとは、ゆっくり読みながら楽しめるゲームかと思います。

まとめ

頭を使って推理するゲームが好き
短編小説が好き
そんな方におススメしたいゲームです。
推理力に自信のある方は是非プレイしてみて下さい。

おわりに(所感)

パッケージと雰囲気で購入したのですが、初見では中華ゲーだと全く気づきませんでした。
キャラデザやスチルも日本人好みのイラストなので、引っ掛かる日本語訳が出てくるまで日本のゲームと思っていたくらいです。笑
中華ゲーと気づいてから「日本語訳的に大丈夫か?」と心配しながらプレイしていました。
というのも、前にプレイしていた中華ゲーの日本語訳が、Google翻訳レベルの雑な翻訳で読むのが大変だったからです。
ですが「意味分からん」レベルの翻訳は出てこず、結果楽しくプレイできました。
個人的に完成度が高くて面白いゲームだったので、制作会社さんには同じシステムのノベルゲームをまた出してほしいと願っています。

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました