2018年5月17日にPS34で発売され、その後2019年3月14日にSwitchでも発売されたジュブナイルアドベンチャーRPG「Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-」
本作は2016年6月23日に発売された「Caligula -カリギュラ-」のリメイク版です。
本作の大まかなあらすじは
「ある時、ボーカロイドのバーチャルアイドル・μ(ミュウ)が自我を持つ。彼女は心に闇を抱える者たちを救うため、彼らにとっての理想的な仮想空間(メビウス)を作成し、自身の歌で人々の魂をメビウスに招き寄せ閉じ込めた。しかし、メビウスから現実への帰還を望む人々(主人公含む)も中にはおり、彼らが集まって『帰宅部』を結成して脱出を図る」
といった内容です。
この記事では、「Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-」の個人的評価(ネタバレなし)を書きながらどういった方におススメか?を紹介します。
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全体評価
個人的には「JRPG好きには良ゲー」だと感じました。
JRPGとは、日本のRPGの『定番』を抑えているゲームに対して使用されます。
例えば
・ターン制バトル
・一本道のストーリー
・豊富なムービーイベント
・キャラクター性が強い
・2次元キャラ
・少年少女が主要キャラ
といった特徴があります。
本作はこれらの特徴をほぼ抑えております。
敵も味方もクセのある魅力的なキャラ・諸事情により登場人物は全員学生・脳筋でもレベルさえ上げれば必ず進めるターン制コマンド式のバトルスタイル。
自由度はそれほど高くなくとも、ワクワクするストーリーが楽しめる、日本人に馴染み深いRPG。本作はそんなRPGを楽しみたい方にはもってこいのゲームです。
ちなみに本作は2週目必須のゲームです。
その理由は後述で説明します。
良かった点
ストーリーが面白い
ストーリー自体はシンプルで分かりやすいです。巨大組織の陰謀論があるわけでも、終盤で世界の根幹を揺るがす真実が判明することもありません。初めから最後まで「μに元の世界に帰してもらう」というのが主人公たちの目的は一切ブレることがありません。
ですが、ブレないからこそ「理想的な世界を捨てて辛い現実に戻ること」についての各キャラの思いや考えが色濃く描かれています。その上キャラクターごとのエピソードが存在し、彼らの過去や行動原理の背景、心の葛藤などが深堀りされております。
また、本作はシナリオが2本に分かれております。
現実に帰りたい人々が集まった「帰宅部」のルートと、理想郷を守るためにμに協力し、帰宅部の活動を阻止する「楽士(敵)」達のルートの2本です。ただし、楽士ルートに入ったとしても、主人公は帰宅部と楽士の活動を両立させるため、最後の最後で帰宅部ルートに戻ることも可能です。(大筋として、楽士ルートは帰宅部ルートに楽士のエピソードを追加する形で物語が展開されます)
そのため、楽士ルートでしか知ることができない楽士達の過去や気持ち、時には帰宅部の部員との関係性が見えてきます。
さらには、どのルートに進むかによって、場合によっては戦線離脱するキャラも出てきます。
とにかくオシャレ
キャラビジュアル・アニメーション・BGM。どれをとっても「オシャレカッコいい」の一言に尽きます。キャラクターデザインのおぐちさんは艦これの敵対艦船のイラストを描かれている方で、繊細で儚くも荘厳さを感じるようなタッチの絵を描かれています。そのイラストが「仮初の理想郷」という世界観とマッチしています。
また、戦闘BGMも「作曲:楽士、歌:μ」という設定のため、歌詞が楽士たちのイメージに合っていて、最後まで聞きたくなります。
気になる点
独特な戦闘システム
戦闘は基本、ターン制コマンドバトルです。
ターン制コマンドバトルと言えば、ドラクエやポケモンと同じ戦闘システムです。
しかし、本作は上記のような分かりやすい戦闘システムではありません。
他のゲームとの違いは下記の通りです。
①一度に3回まで行動が選択できる
味方も含め、自分のターンが来た際に、どの技を繰り出すのかを最大3回まで選択して実行することが可能です。
①「未来予測」ができる
技を選択すると「自分が選択した技を実行した場合どうなるか」を自動でシミュレーションしてくれます。あくまで「未来予測」なので外れることはありますが、その予測を参考に、使用する技を変更することもてきます。
①「時間軸」がある
ドラクエやポケモンでは「誰に(味方or敵)」「何をする(技を使う等)」を選択できますが、本作ではそれに加えて「いつ実行するか」が加わります。
例えば、未来予測で3秒後に敵が攻撃してくるとします。すると、それを参考に「攻撃をガードする」アクションを「3秒後」に設定することができます。それにより、いざ戦闘が始まると、3秒後の敵の攻撃をガードすることができます。
また、使う技によって技を繰り出す時間も違います。一瞬で終わる攻撃もあれば、何秒もかかる攻撃もあります。
ちなみに各キャラのターンに関して、選択した行動(最大3回)が終るまで次のターンは来ません。
そのため、一瞬で終わる攻撃ばかりするキャラと、時間のかかる攻撃ばかりするキャラとでは、ターンの回りが全然違います。
このように、戦闘システムが非常に分かりづらいです。
戦闘になれないうちは、「攻撃したと思ったのにしていなかった」「同じキャラばかりターンが来る」などの疑問が常についてくると思います。
ですが慣れたら「この技は防がれるからやめておこう」「こうやってコンボをつなげよう」などの戦略が練れて面白いのかもしれません。
ちなみに私はA連打で戦闘を進めていたので、戦略は全く練っておりません。そんな脳筋でも、レベルを上げていれば余裕で敵を倒せます。
また上記の他、
・勝利すれば戦闘終了後に死んでいても経験値が入る
・戦闘が終わると全員全回復(死んでいても蘇生する)
・自分よりレベルの低い敵は接触しても戦闘にならない
など、細かい点でプレイヤーに優しい設定になっている部分もあります。
3DCGが残念
本作で一番残念な点。それは3DCGです。
繊細な色合いでモデリングされていて、オシャレではあるのですが、若干グラフィックが古臭いです。
3DCGが残念に思う理由は下記の通りです。
①質感があまり感じられない
壁や小道具、人物の表情までもが、まるでポリゴンに素材イラストをそのまま張り付けたかのように感じられることがあります。主要人物の顔もほぼ動かず、たまに表情に変化があっても、どこかぎこちないです。
「暗い場所にいる」という設定であっても、暗さを感じられず、仲間たちが「暗くて見えない」といっても「そこまで暗くないよ?」となります。
②当たり判定が謎
エンカウント制なので人物同士が重なるのはまだ良いです。しかし、頻繁に足が地面に埋もれるのは見過ごせません。イベントのシーンでもちょくちょく足が地面の下に隠れ、ひどいときには「地面で半身浴しているの?」と思うくらい地面に埋もれていました。
③戦闘中の動きに若干違和感がある
戦闘で敵を打ち上げたとき、敵が落ちてくるスピードがものすごく遅いです。ラピュタでシータが空から落ちてくるスピードぐらい遅いです。コレに関しては、空中技をキメやすくするためだと思うのでまだ納得できるのですが、たまに戦闘中にソレと同じくらい動きがカクついて遅くなることがあります。(おそらく処理が重くてカクついているのだと思われます)
ダンジョンが苦行
ダンジョンは迷いやすい上に長く感じます。
ダンジョンは基本、まっすぐな道と直角の曲がり角で構成されています。その上、視点操作は完全手動のため、角を曲がるたびに視点操作をしないとうまく移動できません。
また、似たような風景がずっと続くため、スタート地からどちらの方向へ進んでいるのかを把握していないと、今自分がどの方角へ進んでいるのかが分からなくなってしまいます。
さらには入り組んだ道が多いため、ダンジョンによっては「迷路」と思えるほどに複雑な場所もあります。
これらの要素が組み合わさっているため、迷いやすくてクリアに時間がかかります。
もし仮に今からプレイされる場合は、全体マップを見ながら進むことをお勧めします。全体マップはSwitchの場合、Yボタンで切り替え可能です。全体マップを見ながらだと、どこへ進めばいいのかが見えるため、そこまで迷わずに済みます。
ちなみに私は序盤、全体マップの切り替え方法が分からずに、フロア内で同じ場所を数時間彷徨いつづけました。全体マップの切り替え方が分からなければ今頃ゲームを投げ出していたと思います。
どんな人におススメか?
ジュブナイルJRPGが好き
はじめに説明した通り、本作は日本人が昔から楽しんできたタイプのRPG作品、すなわち典型的な「JRPG」です。
ただ、「JRPGが好き!」という人でも、全てのJRPG作品が好きとは限らないと思います。
なぜなら、JRPGは戦闘・育成だけでなくストーリーもとても重要だからです。
ではストーリーはどんな感じか?に関する答えは、本作のジャンル「ジュブナイル」にあります。
ジュブナイルというのは、簡単に言うと「青少年向けの作品」です。
「少年少女が主人公」「学園モノ」「青春」「成長」など10代の青少年に共感を得られる内容や、「ファンタジー」「恋愛」「ミステリー」などの、青少年が好む設定が盛り込まれているものが多いです。
本作の場合だと「少年少女が主人公(メビウス内では全員見た目が学生になる)」「学園が舞台」「心の成長が描かれている」「若干のファンタジー要素あり」といった要素があります。
青少年でなくとも、これらの要素が好きな人であれば十分楽しめるゲームと言えるでしょう。
ペルソナと比較しすぎない
本作はペルソナシリーズとの共通点が多々みられます。
・オシャレでカッコよく、どこか繊細さも感じられるキャラビジュアルやアニメーション。
・現代日本の学校を舞台としながらも、非日常的な出来事に巻き込まれる主人公達を描いたシナリオ
・主人公達の心の葛藤・成長を描いたストーリー
そして何より、シナリオ担当がペルソナ2のシナリオを描かれた里見直さんです。
これだけの大きな共通点があるからか、割とペルソナを比較に出す方を見かけます。
かく言う私も、パッケージを見て「ペルソナみたいで面白そう!」と思い購入しました。
ペルソナのような雰囲気を求めて買う分にはいいかもしれません。実際雰囲気は似ています。ですが、ゲーム自体はペルソナとは全く別物ととらえた方がいいです。
ゲームシステムやストーリーの進行方法など、ペルソナと大きく異なる部分もあります。
そのためペルソナのようなゲームを求めて買ってしまうと、「期待していたゲーム違う!」と思われるかもしれません。
まとめ
「ストーリーの面白いJRPGが好き」
「ジュブナイル作品が好き」
「オシャレでカッコいいゲームが好き」
「ペルソナと比較してプレイするつもりはない」
そんな方にはおススメのゲームです。
当てはまる方は是非買ってプレイしてみて下さい。
おわりに(2に期待)
本作の続編「Caligula 2 -カリギュラ2-」が2021年6月に発売されました。
こちらをまだプレイしていないのですが、現段階で評判が非常に高く、ムービーを見る限り3Dグラフィックのクオリティも格段に上がっていて、神ゲーの予感しかしません。
本作のキャラデザとストーリーが魅力的で、個人的にそれだけでも続編が出たらプレイしたいと思うようなゲームだったのですが、その上本作の残念な部分も大幅に改善されていそうで、プレイ前から期待値が高いです。
本作で出てきた人物たちは、間接的にでも登場するのか?楽士ルートは存在するのか?今からプレイするのが楽しみで仕方のないゲームです。